研究概要 |
心不全や動脈硬化などの心血管病の病態において炎症や免疫反応の関与が示唆されている。本年度は(1)自己免疫性心筋炎・心不全モデルおよびヒト心不全症例からの検体を用いて、心血管病の病態における樹状細胞(DG)の役割について明らかにする。(2)心筋のgp130シグナルとその制御因子SOCS3の心筋炎・心不全における役割を明らかにすることを目的として実験を行った。 (1)ミオシンペプチドでパルスし、TLRとGD40で刺激したマウス骨髄由来DCによってマウス自己免疫性心筋炎・心不全が誘発されることを確認した。一方、ヒト心不全症例の末梢血中のDCが著名に減少し、CD40,CD83,CD86,CCR7の発現は優位に増加していた。さらに、治療後、末梢血中のDCは優位に増加し、これは心機能の指標と強い相関があった。心筋傷害に伴う心筋タンパクに対するDCを介した自己免疫が心不全の病態に重要であることが示唆される。 (2)心筋特異的SOCS3トランスジェニックマウス(SOCS3-TG)にコクサッキーウイルスを感染させたところ、SOCS3-TGの心臓では著名な心筋傷害とウイルスの増殖を認めマウスは早期に死亡した。培養心筋細胞においてSOCS3はgp130を効率よく抑制するがインターフェロンシグナル(IFN)を抑制せず、IFNによる抗ウイルス作用にも影響しなかった。そこで、心筋特異的gp130ノックアウトマウス(gp130-KO)にコクサッキーウイルスを感染させたところ、SOCS3-KOの心臓では著名な心筋傷害とウイルスの増殖を認めた。ウイルス性心筋炎における防御機構において心筋のgp130が重要でSOCS3はdetrimentalに作用すると考えられた。 (3)心筋特異的SOCS3-KOを作製した。このマウスは生後6ヶ月より心不全症状がみられ、7ヶ月目までに死亡した。SOCS3-KOの心臓は著名に拡大し、収縮力も低下しており拡張型心筋症様であった。加齢に伴う心不全の抑制に心筋細胞のSOCS3が不可欠であると考えられる。
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