研究概要 |
αβT細胞とγδT細胞という2つの系列への決定がどのような機構で進行するかは未だに不明である.本研究は,γδT細胞系列への分化決定誘導に関与する環境因子を解明することを目的とする.γδT細胞を分化誘導し,その生成過程を明らかにすることは,本推進領域の目指す免疫監視システムの包括的理解に寄与できると考える.さらにこの成果は,生体外の培養系でつくりだしたγδT細胞による細胞療法への応用へ発展させることができる. われわれは,独自に開発した個々の前駆細胞の分化能を解析できる培養系を用いて造血幹細胞からT細胞への系列決定と分化過程を明らかにしてきた.最近Notch ligandのひとつであるDLL1遺伝子を胸腺由来間葉系細胞株(TSt-4)に発現させることにより,間葉系細胞の単層培養との共培養においてT細胞の効率よい分化誘導に成功した.17年度は、このシステムを用いて1個の前駆細胞から1個の前駆細胞からαβT細胞とともに多数のγδT細胞を分化誘導することに成功した.さらに、この培養系と従来から用いてきた通常の組織培養系をベースとし,生成したγδT細胞を固定して細胞内TCRβ鎖を染色することにより,TCRβ鎖の再構成に成功しているにもかかわらずγδT細胞系列へと分化した細胞の割合を調べた.ある培養条件で細胞内TCRβ鎖陽性γδT細胞の割合がより多くなれば,その条件下ではαβT細胞系列とγδT細胞系列の決定のせめぎ合いにおいてγδT細胞系列に向けて誘導されていることを示すことになる.この方法を用いることにより,αβT細胞とγδT細胞系列への決定は前駆細胞の分化の特定の分岐点においてではなく多段階で起こりうることが示された.また,TCR遺伝子の再構成の成否とも関係なく決定が起こりうることも示された(平成17年度免疫学会にて口頭発表).
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