研究概要 |
胸腺では主にαβT細胞がつくられるが、多くのγδT細胞もまた胸腺中で分化することが知られている。最近の研究では運命決定は、またTCR(T細胞レセプター)β鎖が再構成されpreTCRが形成されるのと同時にTCRγ鎖δ鎖も再構成されγδTCRが形成され、preTCRとγδTCRのシグナルの強度によってαβT細胞になるかγδT細胞になるかの運命が決まるという説が有力であった。しかし、運命決定そのものがTCRシグナル依存性であるかどうかは明確には示されていなかった。本研究では、γδT細胞系列への分化決定の分子機構を解明することを目的とする。 マウス胎児胸腺組織を用いた共培養系と、Notch ligandのひとつであるDLL1を発現したマウス間葉系細胞株TSt-4(TSt-4/DLL1)を用いる系を用いた。どちらの系も効率よくαβT細胞とγδT細胞を同時に分化誘導できる。平成18年度は、培養系にIL-7他種々のサイトカインを添加し,細胞内TCRβ鎖陽性γδT細胞群を選択的に誘導できる培養条件を検討した。その結果、ある条件下ではαβT細胞はあまり生成しないで、TCRβ鎖再構成前の段階で分化が停滞するが、γδT細胞はよく誘導できることがわかった。このような条件下で生成したγδT細胞を固定して細胞内TCRβ鎖を染色することにより、TCRβ鎖の再構成に成功しているにもかかわらずγδT細胞系列へと分化した細胞の割合を調べた。この条件下で生成したγδT細胞は、細胞内TCRβ鎖陽性である率が、通常の培養条件で生成したものに比して低かった。この結果は、β鎖再構成が起こる前の段階でγδT系列への分岐が起こっていることを示している。同時に、γδTCRの形成の成否に依存して起こるのではないということを強く示唆するものである。
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