研究課題/領域番号 |
17047044
|
研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
戸川 温 独立行政法人理化学研究所, 幹細胞研究グループ, 研究員 (30359799)
|
研究分担者 |
吉田 尚弘 独立行政法人理化学研究所, アレルギー免疫遺伝研究チーム, チームリーダー (20281090)
|
キーワード | パイエル版 / リンパ節 / リンファトキシンシグナル / IL-7Rα陽性細胞 / ストローマ細胞 |
研究概要 |
胎児期マウスのパイエル板やリンパ節の原基において、Lin-/IL-7Rα+/integrin α4β7+細胞とVCAM-1+ICAM-1+のストローマ細胞との相互作用がリンパ球などの構成細胞の誘導と適切な配置をつかさどることは従前の研究によって明らかとなっていた。この過程におけるリンフォトキシンシグナル(LTシグナル)の役割を明らかにするために、以下の研究を行った。1.LTシグナルの阻害タンパクを新生児期のマウスに投与し、パイエル板の維持過程に与える影響を検討した結果、以下のことが明らかとなった。1)生後1日目のマウスでは、シグナルの阻害によってパイエル板がほぼ完全に消失した。2)生後4日目のマウスでは、一時的にはパイエル板がほとんど消失するが、長期観察では低形成ではあるもののパイエル板の残存を認めた。3)生後7日目以降のマウスでシグナルを阻害してもパイエル板には大きな影響を与えなかった。4)一方、リンパ節にはすべての時期で特に影響を認めなかった。このことから、パイエル板の構造の維持にはリンフォトキシンシグナルが必要であるが、生後1週間以内に組織の基本構造が完成し、その後はLTシグナルを必要としなくなると考えられた。2.LTシグナルとRANKシグナルを同時に阻害すると、短期的にはLTシグナルの単独阻害より顕著なパイエル板の消失を認めたが、長期観察ではLTシグナルの単独阻害と同様な低形成のパイエル板を認めた。またTNFレセプターを介するシグナルはパイエル板の維持に必要ではなかった。このことから、TNFファミリーの分子群によるシグナルの中ではLTシグナルが有意に重要であると考えられた。3.LTシグナル阻害によって組織中のVCAM-1+ICAM-1+細胞が減少することから、LTシグナルはこれらのストローマ細胞の生存と増殖にとって、少なくとも生後1週間は必要であることが示唆された。
|