二次リンパ組織の発生過程において、初期発生の段階のみでなく、組織の成熟と構造の維持においてもlymphotoxin(LT)のシグナルが必要であり、このシグナルの担い手としては、組織の発生を誘導するLin-IL-7Rα^+integrin α4β7^+細胞(lymphoid tissue inducer (LTi) cell)が生後もLT分子を発現することで組織構造の維持を図る可能性を指摘されている。 そこで今年度は、LTi細胞の機能をさらに詳細に解析するために、以下の点に着目して研究を行った。まず、PPi細胞がこの組織構造の変化の過程でどのような役割を持つのか明らかにするために、この細胞の組織内での局在を免疫組織化学染色によって検討した。その結果、この細胞群は胎児期には単純な細胞の衆塊を形成するが、新生児期に濾胞の形成領域に分節化し、さらに濾胞の周辺部に再移動してそこにとどまることが確かめられた。 次に、この現象の機序として、ケモカインシグナルの変化の可能性を検討するため、PPiでのケモカインレセプターの発現を検討したところ、胎児期で発現するCXCR5およびCCR7は新生児期には発現が低下し、代わってCXCR4の発現が亢進していた。CXCR4のリガンドであるCXCL12は新生児期から濾胞間領域のみに発現が認められた。 最後に、PPi細胞の機能として、発生初期と同様にLTシグナルが必要かを検討した。その結果、PPi細胞は新生児期でもLTα1β2を発現し、このシグナルを新生児期に阻害すると濾胞領域と濾胞間領域のストローマ構造の形成がともに阻害されるが、後者に対する影響が特に強く認められた。 以上の結果から、PPiは新生児期に組織内で濾胞領域、ついで濾胞周辺領域へと局在を変化し、それぞれの時期でLTシグナルによってストローマ構造の形成を誘導することで、複雑な組織構造の構築を起こしていくことが示唆された。
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