研究課題/領域番号 |
17047047
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
王 継揚 独立行政法人理化学研究所, 免疫多様性研究チーム, チームリーダー (80231041)
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研究分担者 |
増田 啓二 独立行政法人理化学研究所, 免疫多様性研究チーム, 研究員 (60392122)
大内田 理佳 独立行政法人理化学研究所, 免疫多様性研究チーム, 研究員 (80391887)
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キーワード | somatic hypermutation / immunoglobulin gene / low fidelity DNA polymerase / activation-induced cytidine deaminase / abasic site / uracil-DNA glycosylase / affinity maturation |
研究概要 |
DNA損傷の修復機構は、リンパ球のゲノム安定性維持に必須なだけではなく、免疫グロブリン遺伝子(Ig)の体細胞変異(SHM)やクラススイッチ組み換えにおいても重要である。本研究では、DNAポリメラーゼシータ(Polθ)の酵素活性を特異的に欠失したノックアウトマウスを用いて、Polθが免疫系とりわけIg遺伝子のSHMに果たす役割について検討した。Polθ欠失マウスでは、骨髄、胸腺、脾臓およびリンパ節におけるリンパ球の分化・成熟に明らかな異常は見られなかった。脾臓由来のB細胞は、低濃度の抗IgM抗体に対する増殖応答性が僅かに低下していたが、高濃度の抗IgM抗体、CD40リガンド、LPSなどに対する応答性はコントロールマウスと同程度であった。 一方、Polθ欠失マウスでは、T依存性抗原NP-CGGに対するIgG_1抗体の産生が低下し、とりわけ2次応答における高親和性抗体の産生がより低下していた。また、抗原免疫後の胚中心B細胞の発生は正常であった。Ig遺伝子J領域イントロンのゲノム変異について調べたところ、Polθ欠失マウスでは、G/Cにおける変異が顕著に減少し、A/Tにおける変異も僅かに低下していた。従って、Polθのポリメラーゼ活性はIg遺伝子の体細胞変異に関わることが示唆された。 PolθがどのようにしてIg遺伝子のゲノム変異に関わるのかは現時点では不明である。AID(Activation-induced cytidine deaminase)の活性によりCがUに変換され、さらにUがUNG(Uracil DNA glycosylase)により除去されると脱塩基部位が生じることが知られている。Polθは脱塩基部位を効率よく乗り越えることができるので、その際変異が導入される可能性が考えられる。
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