研究課題
自然免疫の分子認識の標的は、微生物表層に存在する特有の分子パターンとされ、それを認識するタンパク質はパターン認識受容体と呼ばれる。1997年、初めてこのパターン認識に関わるToll類似受容体がヒト,マウスでクローニングされ、この受容体がサイトカインの誘導を通じて適応免疫とも強く連携していることが見出された。これらパターン認識受容体の異物認識機構の解析は緒についたばかりであり、本研究ではグラム陰性菌表層物質であるリポ多糖(LPS)を対象として、まずLPSを認識するカブトガニ血球タンパク質をモデルタンパク質として取り上げた。カブトガニ血球蛋白質は高いLPS結合活性を有し、抗菌活性を発揮する際には、グラム陰性菌の細胞壁にあるLPSを認識し細胞膜を破壊すると考えられている。しかしながら、タンパク質立体構造のどの部位がLPSを認識し、また、細胞膜と相互作用したときに立体構造がどのように変化しているのかについてはまだ明らかになっていない。本年度は、tachyplesin Iを取り上げ、まずDPCミセル中の立体構造を検討し、水中では折れ曲がったβシート構造をしているが、ミセル中ではフラットなシート構造をしていることを明らかにした。この主鎖の変化に伴って、側鎖の配向も変化し、ミセル中では親水性側鎖が折れたたまり、疎水性側鎖が伸びて疎水環境に都合の良いコンフォメーションをとった(投稿準備中)。今後はLPS存在下のコンフォメーション変化を検討し、細胞表層認識タンパク質とリン脂質およびLPSからなる生体膜との相互作用を原子レベルで明らかにしてタンパク質によるLPS認識機構を明らかにする。他に膜インタフェース関連の研究としては、バクテリオファージMuがバクテリアの細胞膜を貫通する部位である基底蛋白質の立体構造を決定した(J.Mol.Biol.,2005)。またハロロドプシンの膜中での安定性に対する塩素イオンとpHの影響を明らかにした(Biochemistry,2005)。また微小管に結合してたんぱく質を輸送するMAP-LC3立体構造も決定した(J.Biol.Chem.,2005)。
すべて 2005
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