研究概要 |
蛋白質の非特異的な凝集を防止するとともに安定性を向上させる低分子化合物やその使用法を開発し,膜蛋白質研究を推進することを本研究の目的とした.蛋白質が凝集すると質の良い結晶ができないだけでなく,溶液NMRの感度や分解能が著しく低下する.NDSB(non-detergent sulfobetain)という一群の化合物は蛋白質の凝集を防ぐ事が知られているので,NDSBが凝集を防止する条件や凝集を防止するメカニズムを検討するとともに,新規なNDSBを合成した. (1)蛋白質の凝集に及ぼすNDSBの効果:NDSBが蛋白質の凝集に及ぼす効果を動的光散乱で解析した.NDSB-195,-201,-211,-221,-256のうち,NDSB-195が最もBSAの凝集を防止した.OVAの場合,NDSBの濃度が高すぎるとかえって凝集を促進する事がわかった. (2)NDSBが結合する蛋白質部位の同定:NDSBが蛋白質のユビキチンのどの部位に結合するのかを多核多次元NMRで決定した.NDSBはユビキチンのβシート部分に特異的に結合していた.この部分はユビキチンが他の蛋白質と結合する部分であった. (3)NDSBによる膜蛋白質の熱安定性の向上:NDSBは生理的に重要な膜蛋白質の熱安定性を顕著に高める事がわかった. (4)新規なNDSBの合成:市販されているNDSBは重水素化物を合成する事が非常に困難であるので,重水素化が可能な新規なNDSBを合成した.新規なNDSBは従来のNDSBと同様に蛋白質の凝集を防止する事が確認された.また,合成の方法を検討する事により,合成収率を上げる事ができた.更に,重水素化物も合成した.
|