研究課題
腸内連鎖球菌Enterococcus hirae V-ATPaseのNtpK回転リングのX線結晶構造解析に関して以下の結果を得た。V-ATPaseを精製し、イソプロパノール処理により複合体を解離させて、(Ntp)Kリングを精製した。これをNa^+存在下結晶化し、多重重原子置換法を使って、2.1Å分解能でその構造を決定した。得られた構造はKサブユニットが対称10量体のリングを形成しており、本酵素が酵母F型ATPaseの倍の分子量を持つ巨大リングであることがわかった。Kサブユニットは4本の膜貫通ヘリックスで構成されていた。ヘリックス1-2とヘリックス3-4はF型cサブユニットの遺伝子重複であると考えられているが、構造的にもよく保存されていた(主鎖のRMSD1.0A)。X線結晶構造が解かれたF型Na^+-ATPaseのcサブユニットと比較すると、アミノ酸配列上でも高い相同性があるが、結晶構造も互いによく保存されていた。F型ATPaseとV型ATPaseのイオン輸送の本質的なメカニズムは酷似していると思われる。Na^+と考えられる電子密度がヘリックス2-3間のリング側面中央(E^<139>近傍)に存在しており、計10個のNa^+がそれぞれのKサブユニットに同様に結合していた。Na^+結合ポケットは5つの残基(ヘリックス2の:L^<61>の主鎖、T^<64>の側鎖、Q^<65>の側鎖、ヘリックス3のQ^<110>の側鎖、ヘリックス4のE^<139>の側鎖)から構成されていた。Na^+結合ポケットはリング疎水性外側面に並んでおり、リング回転によるイオン輸送機構モデルを分子構造から実証したことになる。空間充填図で表すと、Na^+が完全にリング内に閉じ込められていた。E^<139>の側鎖はNa^+結合サイトの蓋のような役割をしていて、これが開閉することにより、Na^+の結合・解離が可能になっていると推定された。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (2件)
Science 308
ページ: 654-659
Journal of Bioenergetics and Biomembranes 37
ページ: 411-413