研究課題
本課題では、微量で迅速に構造情報が得られるという特徴を有する質量分析(MS)を、構造の詳細を原子レベルで明らかにすることができるNMRを組み合わせて用いることにより、特異性はあるが親和性の低いタンパク質複合体の構造について解析するための方法論を構築し、ソフトな相互作用により形成されるタンパク質複合体の構造機能解析を目指して研究を行った。1.ヒト基本転写因子TFIIEの構造解析ヒトTFIIEは基本転写因子の一つで、その全体の分子構造についてはこれまで解かれていなかった。ゲルろ過でα2β2のヘテロテトラマーの位置に溶出する画分について、エレクトロスプレー質量分析(ESI-MS)でその質量を正確に測定するとともに、分析用超遠心およびX線小角散乱による構造解析を行った。その結果、ヒトTFIIEは溶液中で分子量が84,152±5であることを明らかにし、また非常に細長い構造のαβのヘテロダイマーで存在することを示すことに成功した。これにより、X線結晶構造解析で全体構造を明らかにできない場合にも、この方法で巨大分子の溶液構造に関する知見が得られることを明らかにした。2.c-Myb DBDとHSF DBDの相互作用領域の解析NMRで既に構造解析が行われているc-Myb DBDとHSF DBDが溶液中で1:1のストイキオメトリーで弱いながらも特異的に相互作用し、一部が複合体を形成していることをESI-MS法で確認した後、クロスリンク法と質量分析を組み合わせて用いることにより相互作用領域の解析を行った。その結果、異なる長さのスペーサーを用いること、アムステルダム大・Back博士より供与いただいた解析ソフトFindLink2を用いることで、修飾された部位の帰属を容易に行えることを明らかにするとともに、アミノ基間の距離情報を示唆するデータが得られた。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (3件)
Proteins : Structure, Function, and Bioinformatics 61・3
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