研究課題
チトクロム酸化酵素は呼吸鎖の末端に位置し、チトクロムcから電子を受け取り、分子状酵素を水にまで還元すると共に、プロトンを膜の内側から外側へ能動輸送する。バクテリアから高等生物まで酸素を利用するあらゆる生物の生体エネルギー変換に最も重要な役割を果たす本酵素の反応機構を理解するためには、立体構造に関する情報が不可欠である。我々は、界面活性剤としてデシルマルトシド(C10M)を用いて精製、結晶化を行ない、酸化型で1.8ÅのX線結晶構造を明らかにした。ウシ酵素では進化の過程で付加されたサブユニットを介してダイマーを形成したことからウシ酵素の機能単位は2量体であると考えられた。しかし、最近、新規合成した界面活性剤、3-オキサトリデシルマンノシド(30M)を用いた標品から得られた結晶中において酵素は単量体で存在していた。この結晶は、同じ精製バッチ内で得られた結晶間では、非常によい同型性を示したので4-7個のデータをマージングできたため、1.65Å分解能での解析が可能となった。また、酸化型結晶をアスコルビン酸、チトクロムcを含む緩衝液に浸せきし、還元型結晶を作成することに成功し、1.8Å分解能での解析が可能なデータの収集に成功した。この様に30Mから得られた結晶は、単量体の構造解析を可能にするだけでなく、C10Mに比べてより高い分解能で構造解析することを可能にした。30M及びC10Mを用いた酵素に結合するリン量に差異は認められず、またリン脂質の種類も変化がなかった。そこで、まだ一部でではあるがx線結晶構造を解析したところサブユニット3に強固に結合するホスファチジルグリセロールの位置は変化が認められなかったがグイマー形成に重要な働きをしているカルジオリピンなど数個のリン脂質には大きな移動が認められた。
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