真核細胞における小胞とターゲット膜の融合には、SNAREと呼ばれるα-ヘリックス構造を有する膜タンパク質が関与する。膜融合は、SNARE由来の4本のα-ヘリックス(Qa、Qb、Qc、R)が強固に結合することで引き起こされると考えられている。我々は哺乳類細胞の小胞体膜に存在するsyntaxin18(Syn18)を同定し、Syn18(Qa)がBNIP1(Qb)、p31(Qc)、Sec22b(R)と結合していることを明らかにした。本年度は、このSNARE複合体に関して以下の成果を得た。 1)SNAREサブユニットの大腸菌での発現と精製 膜貫通領域を欠失させたSNAREを大腸菌で発現させ、精製した。Syntaxinはそのアミノ末端ドメイン(NRD)が、自身のC末端側のα-ヘリックス(SNAREモチーフ)と結合して閉じた構造をとることが知られており、この性質によって他のSNAREとの結合が調節されているので、Syn18の場合はNRDも欠失させた変異体(ΔN-Syn18)を発現・精製した。 2)SNAREサブユニット間の結合とコンフォメーション変化 最初にSyn18と他のSNAREの結合を確かめた。次に、ΔN-Syn18とSNAREの結合解析を行ったところ、Sec22bとは強く結合し、p31とは弱く、BNIP1とは結合しないことが判明した。一方、Sec22bが存在すると、p31およびBNIP1はΔN-Syn18と強く結合した。CDを用いて解析した結果、ΔN-Syn18はSec22bが存在するとα-ヘリックス含量が増加することが判明した。このような変化はBNIP1やp31では誘起されず、Sec22bがSyn18の「誘導適合」を特異的に引き起こすことが判明した。 3)SNAREの構造解析 X線小角散乱およびNRRを用い、p31およびBNIP1の構造解析に着手した。 研究協力者:上田淑子(東京薬科大学・生命科学部・プロジェクト研究員)
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