本年度の計画のうち、成長円錐に局在するモーター蛋白質ミオシンV及びアクチン結合蛋白質の生化学的解析に関して、以下の知見を得た。 (1)ドレブリンはアクチン・ミオシンV相互作用を阻害する:アクチン線維の濃度を変化させ、ミオシンVのアクチン活性化ATPase活性を測定したところ、Vmaxで13(sec^<-1>)という活性が得られた。一方、ドレブリンの結合したアクチン線維を使用した場合、活性は最大濃度でも3(sec^<-1>)に留まった。また、アクチン濃度を一定にしてドレブリン濃度を増加させたところ、ミオシンVの活性は90%以上阻害された。以上の結果は、ドレブリンはアクチンミオシン相互作用を強く抑制する事を示している。これを確認するため、ミオシンV上のアクチン滑り速度をin vitro motility法で測定した。ドレブリン非存在下では0.9ug/mlミオシンコーティング濃度でアクチン線維の接着が消失したのに対し、ドレブリン存在下では7.5ug/mlで接着ができなくなった。ただし結合した線維のスピードは濃度、およびドレブリン存在非存在に関わらず、0.3〜0.5um/secで一定であった。以上の結果は、ドレブリンはミオシンVのATP分解速度には影響を与えず、アクチンとミオシンVとの結合を阻害する事によりアクトミオシン相互作用を阻害する事を示唆している。 (2)ドレブリンはアクチン線維架橋能を有する:アクチン線維とドレブリンを混合し、低速遠心により沈殿するアクチン量を調べた所、ドレブリン量が増えるに従い沈殿するアクチン線維量が増加した。また、蛍光標識したアクチン線維にドレブリンを混合して顕微鏡観察したところ、綿飴状の構造が観察された。 以上の結果は、ドレブリンが成長円錐の運動、及びアクチン構造調節に深く関わっている事を示唆している。今年度は細胞生物学的解析が滞ってしまったが、今後これらの蛋白質の動的挙動をより詳しく解析し、その生理的役割を探っていきたい。
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