研究概要 |
N末端から730番まで車軸藻ミオシンで731番から後が細胞性粘菌ミオシンであるキメラミオシンは調節軽鎖をリン酸化するとアクチンとの親和性が上昇した。これに対して、743番までが車軸藻ミオシンでそれ以降が細胞性粘菌ミオシンであるキメラミオシンは調節軽鎖をリン酸化してもアクチンとの親和性が上昇せず低いままだった。したがって、この13残基の細胞性粘菌のアミノ酸配列中のどこかにアクチンとの親和性を調節する機構に必須な部位が存在するはずである。そこで、13残基のアミノ酸部分をいくつかの電気的性質の変化が著しい領域に大きく分け、N末端から733,737,740番までが車軸藻ミオシンというキメラミオシンを作った。それぞれのキメラミオシン遺伝子を細胞性粘菌内に導入し、発現したキメラミオシンのアクチンとの親和性が調節軽鎖のリン酸化によって変わるかどうかを調べたところ、740番までが車軸藻ミオシンであるものも軽鎖リン酸化による調節を受けることがわかった。従って、軽鎖リン酸化による調節に関与するアミノ酸は細胞性粘菌ミオシンの741番から743番までのうちにあるといえる。この配列のうち車軸藻ミオシンの対応するアミノ酸と比べて性質が大きく異なるものは741番目のアルギニンであった。そこで、遺伝子操作によってこのアルギニンをアラニンに変えた細胞性粘菌ミオシンを作ったところ、軽鎖をリン酸化してもアクチンとの親和性は変わらなくなった。従って、このアミノ酸が軽鎖リン酸化による調節に関与することが明らかになった。
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