研究課題
鞭毛繊毛運動は、ダイニンのATP加水分解によって得られるエネルギーを用いて微小管を能動的に滑らせ、それを二次元もしくは三次元の屈曲波形形成を行っている。この微小管の滑り運動を自発的且つ周期的な屈曲波形造成に結びつける仕組みについてはほとんど分かっていない。この問題を解決するために、まず鞭毛を局所的に阻害する方法として、蛍光色素PRODANを細胞膜除去したウニなどの精子鞭毛に作用させ、局所的にUVを照射する方法を開発した(PRODAN-UV法)。この操作によってUV照射を受けた場所のみが運動阻害される。興味深いことに、運動は阻害されるもののATPase活性はほとんど影響されなかった。また、いくつかの実験的証拠から、ダイニンが微小管間に架橋を作り、いわゆるライゴールに類似した状態が作られ、その結果として微小管間の滑り運動が阻止されることが推測された。鞭毛の基部、中央部、後半部など、様々な部位を局所的に阻害したが、基本的に阻害を受けていない部位では自発的・周期的な屈曲波形成が観察され、鞭毛のどの部位にも自発的振動運動をする能力があることが明らかになった。ところで従来からの有力な説として、鞭毛基部に運動を起こさせるペースメーカー様なものがあるという考えがある。そこでPRODAN-UV法で精子鞭毛基部近くを阻害し、その阻害部位の中央で鞭毛を切断し、精子頭部と基部を切り離したところ、鞭毛の阻害されていない部分ではやはり自発的な振動運動が観察された。すなわち、鞭毛の自発的振動には、微小管を束ねて固定する固定端が必須であることが明らかになった。また、このように短い鞭毛で生じる自発的な屈曲波の振動数は、鞭毛の長さが短いほど高くなることも示された。今後はPRODAN-UV阻害の実態の分子レベルでの解明、この方法をさらに発展させた自発的振動運動形成機構の解析を行っていく予定である。
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