平成17年度は以下の研究を行った。 (1)分泌小胞輸送機構の解明-Rab蛋白質の関与からモーター蛋白質の同定 マスト細胞株であるRBL-2H3細胞を用いて、分泌小胞の輸送に関わるRab蛋白質とモーター蛋白質の発現解析を行った。RT-PCRおよびウエスタンブロッティングにより、RBL-2H3細胞には、Rab8、10、11、27aの発現が、モーター蛋白質としてMyosinVの発現が確認された。発現が確認されたすべてのRabについて、蛍光蛋白質であるYFPとの融合蛋白質を発現させたところ、Rab27aのみが分泌小胞膜に局在していた。このことは、Rab27aが分泌小胞の輸送に関与していることを強く示唆する。 (2)Rab27とモーター蛋白質の相互作用 (1)でその分泌小胞の輸送への関与が示唆されたRab27aについて、発現が確認されたモーター蛋白質であるMyosinVとの相互作用を調べた。免疫沈降法による解析の結果、Rab27aとMyosinVの相互作用が確認された。このことは、マスト細胞では分泌小胞がRab27aを介してMyosinVと結合し、アクチン線維上を輸送される可能性が示唆する。 (3)分泌部位の構造 輸送された分泌小胞が細胞膜の特殊な構造体に輸送され、そこで細胞膜と融合するという可能性を調べるために、(2)で分泌への関与が明らかとなったアクチン、さらに細胞膜の構造および膜融合の観点から、細胞膜のラフト構造に着目した。ラフトの形成維持にアクチンが関与すること、開口放出に関わる膜融合にラフトが関与していることが示唆されているからである。Methyl-beta-cyclodextrinで細胞膜のラフトを破壊してマスト細胞からの分泌を調べると、分泌が抑制されることが明らかとなった。今後、アクチン線維とラフト構造の結合、ラフト構造における膜融合装置の集積状態について検討を加える予定である。
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