本研究は、Kin-Iファミリーキネシンとキネトコア複合体、およびM期チェックポイント複合体の3システム間の相互作用を明らかにし、Kin-Iファミリーキネシンがスピンドル構築、細胞周期制御という高次プロセスにどのように関与しているのかを解明することを目的としています。本年度は、まずKin-Iファミリーキネシンとキネトコア構成因子であるMis6蛋白質との物理的相互作用に注目して解析を進めた結果、Mis6がそのN末領域を介してKin-Iキネシンと結合することを示唆する結果を得ました。Mis6のN末領域はM期チェックポイント蛋白質Mad2と相互作用する可能性も示唆されています。さらに、Kin-Iキネシンと遺伝的相互作用するキネトコア・スピンドル構成因子であるDASH複合体がやはりMad2のキネトコア集積化制御において重要な役割を果たしていることを示す結果を得ました。これら結果はKin-Iキネシンとチェックポイント制御機構の関連性を探る手がかりとなるだろうと考えています。また、Kin-Iと相互作用するMis6 N末領域を過剰発現すると、M期中期スピンドルが周期的に伸縮を繰り返すという特異な現象を見出しました。さらに、Kin-Iキネシンを欠く細胞中でMis6 N末断片を発現すると染色体分離異常・スピンドル形成異常が生じることも見出しました。これらはキネトコアとKin-Iキネシンの相互作用がスピンドル構造の決定のみならず、染色体分配過程においても重要であることを示唆しています。現在これらの知見をさらに深めるべく、解析を進めています。
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