マウス生殖細胞分化で起こる核内ドメインのダイナミクスとイメージングを可能にするため、今年度は生殖細胞の核内ドメインに特有のタンパク質に対するモノクローナル抗体(MoAb)の作製を行った。さらに、樹立した抗体を使って精巣切片に対し免疫組織学的解析を行った。 これまでに、核内ドメインのうちparaspeckleに固有のPSP1、PSF、NonOの3種のタンパク質とcajal podyに特有のcoilinタンパク質に対するMoAbを樹立した。これら抗体は組織ウエスタンブロッティングにより単一バンドを検出した。マウス組織切片に対し免疫組織学的解析を行ったところ、精子形成の分化段階応じてダイナミックな核内分布の変化を示した。特に、coilinは大部分の精子形成期には核内に分散して分布するのに対し、分化の最終段階では精子尾部の基部に強染色された。また、PSP1、PSF、NonOも精子形成期の核内で局在を変化することを考え合わせると、分化に伴い大きな核内環境の変化が生じていると考えられる。また、PSP1は遺伝子の転写からmRNAの翻訳まで関与する多機能性タンパク質であることを明らかにしつつあり、この機能と精子形成分化中の核内分布を比較する準備が整った。さらに現在、sc35、fibrillarin、PML、SMN1に対するMoAbの作製とこれら抗体を使ったマルチカラー免疫抗体法で核内の詳細な分布を解析する予定である。
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