研究概要 |
・核マトリックスと転写・複製時のクロマチンループのダイナミクス(HSP70領域他):ヒトHSP70、マウスIgf2-H19インプリント領域につき、ゲノム配列情報・転写状態のイメージング・クロマチン免疫沈降(ChIP)等を利用して、転写ファクトリーの形成、クロマチンループ構造の転写に伴うダイナミクスを明らかにした。 ・DT40を用いたゲノム上の核マトリックス結合解析(HSP70領域他):ゲノム上のマトリックス結合部位をDT40細胞で詳細に調べ、鳥類細胞においても転写は核マトリックス上で起こることを明らかにした。 ・分子コーミングを用いた複製フォーク解析法を確立した。 ・クロマチンのエピジェネティックな構造変換:DNAメチル化阻害時のヘテロクロマチン領域における複製フォークの進行と複製タイミング、ヒストンのエピジェネティックな動態との相関関係について解析した。 triMeK4H3,diMeK4H3はDNAメチル化阻害で、セントロメア周辺ヘテロクロマチン領域に局在する一方、triMeK9H3はこの領域では少し減少した。また、24時間の5azadC処理によって、セントロメア周辺ヘテロクロマチンにおける修飾ヒストンの変換が起きた核はS期初期では少なく、この領域が複製するS期中期以降の核で多く見られた。これらの結果から、5-azadC処理により、セントロメア周辺ヘテロクロマチン領域のDNAのメチル化が減少することで、複製タイミングが早くなり、さらに複製フォークの進行が促進されるに伴って、その後のクロマチンアッセンブリーの際、ヒストン修飾の構成に大きな変化が起こると示唆された。 ・DNAの損傷と複製フォーク進行制御のダイナミクス:複製フォークの進行に必要なタンパク質であるtopoisomerase Iと相互作用しその機能を制御しているタンパク質PARP-1(poly(ADP-ribose)polymerase-1)を、その阻害剤処理やRNAiによるノックダウンを行い、その際の複製フォークの進行速度等を解析して、PARP-1自身、あるいはtopoisomerase IなどにPARP-1によるpoly(ADP-ribosyl)化が常時起こって複製フォークの進行を制御し、DNA損傷を感知するとさらにその進行を制御するという、PARP-1による新たな複製フォークの進行制御機構を見出した。
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