研究概要 |
核の内と外は単に脂質膜構造によって仕切られているだけではなく、核膜孔複合体のトポロジー、ラミンネットワーク、染色体、Ran-GTP/GDPの濃度勾配、核移行・核外移行などによってもたらされる複雑かつ動的な非対称構造を持つ。申請者はこの複雑なトポロジー形成機構を理解するため、生化学的解析に適した特殊性を持つアフリカツメガエル卵母細胞単離卵核を、細胞内におけるin vivo環環境と精製分子によるin vitro環境の中間に位置する新たな実験系として用い細胞核の機能を探っている。平成17年度は以下の研究を行った。1「核内膜蛋白質の局在機構の解析」アフリカツメガエルの核内膜蛋白質群をN末端EGFP融合組換え蛋白質としてアフリカツメガエル卵母細胞に発現させ分子状態や細胞内局在を解析した。xLamin B1/B3は核内に局在したが、単一の膜貫通領域を持つ分子(xLAP2w,xEmerin)は細胞質に留まり核移行せず、複数の膜貫通領域を持つ分子(xMAN1,xLamin B receptor,xNurim,xSUN1,xSUN2)は発現しなかったことから、核内膜蛋白質の局在機構は体細胞と卵母細胞で異なると推測された。2「核内に閉じ込められた核外移行蛋白質の挙動の解析」EGFP、及びそのC末端にSV40 T抗原の核移行配列(EGFP-NLS)またはHIV Rev蛋白質の核外移行配列(EGFP-NES)を付加した組換え蛋白質を卵母細胞の細胞質に注入したところ、EGFPは細胞質と卵核に均一に分布したのに対して、EGFP-NLSは卵核へ、EGFP-NESは細胞質への濃縮が見られた。これらの組換え蛋白質をオイル中で単離した卵核内へ直接注入したところ、EGFP-NES注入卵核において核の不安定化が見られたことから、現在その分子機構を解析している。
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