研究概要 |
染色体のクロマチン構造は、細胞周期を通じてドラスティックに変換している。このクロマチンの構造ダイナミクスは、遺伝子の転写、ゲノムDNAの複製、染色体組換えなどを調節する重要な生体機構である。本研究では、クロマチンダイナミクスの構造基盤を明らかにすることを目的として、リコンビナントタンパク質を用いた試験管内クロマチン再構成系により解析を行っている。本年度は、分裂期での染色体分配に重要な役割を果たす、セントロメア領域に着目してその試験管内再構成を行った。クロマチン構造は、4種類のコアヒストン(Histones H2A,H2B,H3,H4)と146塩基対のDNAからなるヌクレオソームを基本構造とする。染色体のセントロメア領域には、αサテライト配列のリピートが存在し、そこにセントロメア特異的な染色体構成タンパク質から特殊なヌクレオソーム構造が形成されると考えられている。まず、セントロメア領域に安定に局在するヒストンH3のバリアントであるCENP-A、およびセントロメアに配列特異的に結合するDNA結合タンパク質であるCENP-BのDNA結合ドメインをリコンビナントとして精製した。そして、精製したCENP-AおよびCENP-BのDNA結合ドメインと、同様に大腸菌において大量発現させてリコンビナントタンパク質として精製したコアヒストンH2A、H2B、およびH4を用いて、ヒトゲノムDNAより得たαサテライト配列DNA上でセントロメア特異的ヌクレオソームを再構成することに成功した。得られたセントロメア特異的ヌクレオソームの構造的特徴を、生化学的および分子生物学的手法により解析した。
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