研究課題
T20(負の超らせんを擬態した180bpの人工ベントDNA)はクロマチン内での転写を活性化できる。平成18年度は、ゲノムにT20を保有するマウスのES細胞株を用いて、T20が細胞の分化に及ぼす影響について調べた。この細胞株は分化誘導の第1段階(中・内胚葉系細胞への分化誘導)では特に異常を示さなかったが、分化誘導の第2段階(肝細胞への分化誘導)に移行させる際に、条件によっては細胞増殖が停止してしまうことが明らかになった。なお、T20をもたない対照株では、問題なく肝細胞に分化した。この結果は、T20が細胞の分化機構にも関与しうることを示唆しており、興味深い発見と思われる。また、T20をもつ細胞株は、対照株にくらべて増殖速度が約1.5倍速いことが明らかになり、T20はDNA複製にも影響を及ぼす構造であることが示唆された。この他、平成18年度は、DNAの柔軟・剛直特性をゲノムワイドに解析できるコンピュータプログラムの開発を試みた。その結果、300MbのDNAの機械的特性をわずか1時間程度で解析できるプログラムを作成することに成功した。このプログラムを用いた解析は緒についたばかりであるが、興味深い知見が得られ始めている。たとえば、酵母第3染色体を用いた解析では、遺伝子間領域(プロモーターを含む)は、ORF (open reading frame)よりも硬いDNAでできていることが判明した。さらに当該年度は、二本鎖DNAに自己集合の能力があることと、DNAの自己集合は、生理的濃度のマグネシウムイオンの存在下で顕著に起こり、電気泳動でも分離しないほど安定であることを論文で発表した。
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