研究概要 |
大腸菌の染色体複製とその分配は同時に進行し,複製した染色体部分から順次分配されて行く。また、原核生物の染色体は細胞内で核様体という高次構造体を形成する.核様体は、マルチフォーク複製増殖下で、動的な形態の変化を示す。これは複製や分配の動的変化が、核様体の形態に反映しているからだと思われる。このことは,複製開始点を細胞の両極へ移動させるセントロメア様の機能領域migSが欠損すると,核様体の形態に変化が起こることからも察することができる。このような核様体の形態変化から、大腸菌の細胞内での染色体の分配や核様体その物の形成機構の解明につながるものと期待される。本研究課題では、本年度、マルチフォーク複製増殖下の細胞について、分裂周期を通した細胞内での大腸菌の核様体の形態変化を調べた。まず、ゼラチンを含む富栄養培地中で増殖する大腸菌の核様体の形態の経時変化から,核様体がある一連の規則的な形態変化をしながら分配されていることを確認した。さらに、核様体をDNA特異的な蛍光染色剤(DAPI)で染色し,その顕微鏡の連続切片像から核様体の3次元構築を行った.これらの結果から得られた3次元の核様体の構造は,核様体が複製した染色体領域が2つに分かれ,それぞれが新たな核様体を形成するというモデルとよく一致していた。また、核様体の3次元構造と複製開始点や複製終了領域,migSなどとの位置関係を調べた結果、核様体の3次元構造の変化は、必ずしも複製開始点やmigSとの位置関係とは一致するものではない。核様体が2つに分かれ、サブドメインが形成されるとき、染色体凝集因子であるMukBタンパク質がその中心にあるようである。
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