環境応答にともない誘導される植物二次代謝物質の生合成と液胞等へ輸送・蓄積をはじめとする細胞内トラフィッキングのメカニズムを明らかにすることを目的として以下の研究を行った。アントシアニン等のフラボノイド類は、光照射、低温、栄養欠乏等の広範な環境ストレスに応答して生産され、物質の有する遮光性や抗酸化活性によって生理的な防御機構を担っていると考えられている。このアントシアニンの液胞への蓄積に関することが推測されるグルタチオンS-転移酵素(GST)ホモログおよびトランスポーター様タンパク質に関する機能解析を行った。アントシアニンを高蓄積するシロイヌナズナのPAP1過剰発現体において発現が有意に上昇する3つのGST、および2つの糖トランスポーター様をコードする遺伝子について、それぞれの遺伝子のノックアウトラインの代謝物の詳細なプロファイリングを行った。その結果、1つのGST(TT19)のみが葉柄におけるアントシアニン蓄積および種皮におけるプロアントシアニジン蓄積に関与することが明らかになった。これら5つの遺伝子はすべてPAP1過剰発現により発現上昇するが、さらに、公開されているマイクロアレイデータによる遺伝子発現相関係数を基にしたネットワーク解析では、これらのうちTT19遺伝子のみがアントシアニン生合成遺伝子群の発現と高い創刊を示すことが明らかとなった。 また、ルピナス属植物に含有されるキノリチジンアルカロイドは、葉緑体でリジンの脱炭酸により生じたカダベリンがペルオキソーム内で酸化され、環化された後にアシル化などの修飾を受けて液胞に蓄積されるがその詳細は不明である。アルカロイド含有成分変種に特異的に発現する遺伝子をプロファイリングし、リジン脱炭酸、カダベリン酸化、およびアシル化に関与すると推測される遺伝子候補を単離した。
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