植物は種々の環境ストレスに適応して生育している。本研究では植物の酸化ストレス耐性機構として小胞体タンパク質によるオルガネラの維持機構を明らかにすることを目的として研究をおこなう。本年度は以下の成果を得た。 小胞体のストレス耐性因子BI-1は、そのC末端領域にcoiled-coil領域を有しており、この部分を削った変異タンパク質はストレス耐性能を消失することが明らかとなっている。そこで本因子と結合する因子を様々な手法を用いて単離することを試みた。その結果、カルモジュリンがC末端領域に結合することが明らかとなった。また、酵母を用いたTwo Hybridスクリーニングからは、チトクロムb5が単離された。BI-1との結合領域を調べた結果、チトクロムb5はBI-1のC末端領域以外の場所に結合していることが明らかとなった。チトクロムb5はシロイヌナズナゲノム中に6種類存在し、ミトコンドリアおよび小胞体膜上に局在化する分子種が知られている。BI-1が小胞体膜タンパク質であることから、小胞体局在型のチトクロムb5が植物細胞内でBI-1との相互作用因子である可能性が考えられる。実際に、酵母を用いたスクリーニングにより単離された分子種も小胞体局在型のチトクロムb5であった。チトクロムb5は脂肪酸合成系の酵素群に電子を供給する役割を担っている。BI-1はチトクロムb5との結合を介して、酸化ストレスによりダメージを受けた膜成分の修復や、脂質シグナルの調節機構に関与しているのかもしれない。これらの仮説に基づいて、さらに詳細な解析を行っていく予定である。
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