研究概要 |
オオムギのムギネ酸類生合成経路で機能する酵素の遺伝子,7つのニコチアナミン合成酵素遺伝子,2つのニコチアナミンアミノ基転移酵素遺伝子,デオキシムギネ酸水酸化酵素遺伝子のいずれも、鉄欠乏処理により顕著にその発現が誘導されるが,これらの遺伝子の発現の日周変動は,ムギネ酸類の分泌に見られるような明確な日周変動ではなかった.このことから,オオムギにおいてムギネ酸類の合成は日周変動を示さないものと考えられた.さらに,ニコチアナミン合成酵素活性を3時間毎に測定したところ,その活性はほぼ一定であったことから,ムギネ酸類の合成は昼夜を通して一定であると考えられた.従ってムギネ酸類の分泌に見られる日周変動は,ムギネ酸類の合成の日周変動に起因するものではなく,ムギネ酸顆粒の細胞表層への輸送と、その後の分泌の過程において制御されていると考えられる. 一方,イネにおいてもムギネ酸顆粒が存在することが明らかになった.オオムギほど明確ではないがイネにおいてもデオキシムギネ酸の分泌量が昼夜で変動を示すことが明らかとなった.イネにおいてもオオムギ同様ニコチアナミン合成酵素がムギネ酸顆粒に局在することが考えられた.イネのニコチアナミン合成酵素遺伝子(OsNAS2)のプロモーターにOsNAS2のORFとsGFP遺伝子とをつないだコンストラクトを作成しイネに導入した.鉄欠乏条件下で水耕栽培した形質転換イネにおいて,融合タンパク質の発現がみられた組織は,これまでにプロモーターGUS植物の鉄欠乏条件における解析から示されているOsNAS2の発現する組織と同じであった.さらに,根の細胞内において,融合タンパク質は小胞へ局在することが観察された.このことから,イネのニコチアナミン合成酵素はムギネ酸顆粒に局在しているものと考えられた.
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