本研究では植物の環境適応と細胞・オルガネラ分化の研究対象として特に液胞と細胞骨格に着目し、分化・形態形成、細胞分裂周期、環境応答の各過程でのそれらの動態をリアルタイムで観察するとともに、得られた画像情報から独自開発の立体画像解析ソフトウェアを用いて、時空間的かつ定量的解析を行っている。多様な構造をもつ液胞をはじめとする細胞内構造の動的な構造変化を、細胞骨格および遺伝子発現との関連で解析することで、植物細胞の形態形成・制御をベースとした成長・分化および環境適応に伴う細胞内構造の機能、生理的意義や相互作用を明らかにしていくことを目指している。 本年度は、タバコBY-2やシロイヌナズナ細胞に加えて、in plantaでの解析系として、ヒメツリガネゴケやシロイヌナズナおよびその形質転換株(各細胞内構造の可視化細胞および植物体)を用い、上記の目的にそって以下のように細胞内構造の解析を行った。 (A) in plantaでの液胞および細胞骨格の動態解析I : in plantaでの液胞および細胞骨格の検討を行うべく、液胞膜と細胞骨格を可視化したヒメツリガネゴケを用いた観察と画像処理による解析を行った。その結果、伸長時の細胞先端部の液胞構造と細胞質の特徴的な分布が、主に微小管によって制御されていることが明らかになった。 (B)in plantaでの液胞および細胞骨格の動態解析n:高等植物のII:高等植物のin plantaでの環境応答とオルガネラの動態解析のモデル系として、気孔開閉時の孔辺細胞の制御機構について検討し、サイトカイニンおよびオーキシンはエチレンの合成を介してABAによる気孔閉鎖を阻害することを見出した。また、液胞構造を可視化したシロイヌナズナを用いて、立体再構築による定量解析を行い、気孔開閉における液胞の寄与を明らかにした。
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