研究課題
植物細胞におけるプラスチドの動的変化において、形態的に最も大きな変化は、チラコイド膜やプロラメラボディなどの内膜組織の形成や消失である。最近我々は、シロイヌナズナのプラスチドの内包膜と外包膜に2つの主要な糖脂質合成系が存在し、それぞれが、光、栄養条件などの外的環境や、植物ホルモンなどの内的因子によって異なる制御を受けているという新しいモデルを提唱した。本研究では、このような異なる経路を介したプラスチド膜脂質の生合成制御がプラスチドの分化そのものにどのような形で寄与しているかを明らかにすることを目的として研究を行う。シロイヌナズナサイトカイニンレセプター変異体を用いて、糖脂質蓄積に与える影響を調べた。cre1/ahk4変異体、ahk2,ahk3変異体で比較したところ、ahk2ahk32重変異体で、発芽初期においてMGDGの蓄積に阻害が見られることが明らかになった。cre1変異体では全く影響は見られなかった。このことから緑化初期での糖脂質合成系はAHK2,AHK3の制御下にあると考えられる。一方、オーキシン情報伝達に関して、オーキシン応答に関わるSLR/IAA14のgain-of-function変異体slr/iaa14で、まず、リン欠乏時の糖脂質合成に与える影響を解析したところ、リン欠乏時の外包膜での糖脂質合成(DGDG合成)が著しく抑制されることが分かった。このことから、SLR/IAA14はTypeB依存の糖脂質合成を抑制的に制御していることがわかった。さらにオーキシン情報伝達を正に制御する転写因子で、IAA14と相互作用することが報告されている、ARF7,ARF19の2重変異体arf7arf19(loss-of-fuction変異体)でも同様な結果が得られた。このことからリン欠乏時の糖脂質の蓄積は、これらのタンパク質を介してオーキシンに制御されていると考えられる。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (3件)
J. Mol. Biol. (In press)
FEBS Lett. 580
ページ: 4086-4090
Plant Physiol. 141
ページ: 1120-1127