研究概要 |
葉緑体分裂に関与する遺伝子変異体ftsZ1-1,ftsZ2-1,ftsZ2-2とcrlとの二重突然変異体をそれぞれ作製し、植物の形態および細胞あたりの葉緑体数を解析した。その結果、すべての二重突然変異体において植物全体の形態、色素体分裂いずれにおいてもcrl単独変異体の表現型が亢進された。これからftsZ1-1,ftsZ2-1,ftsZ2-2がcrl変異のエンハンサーである事が明らかとなった。 さらにcrl変異体、ftsZ1-1変異体およびcrl ftsZ1-1二重突然変異体の胚について詳細な解析を行ない以下の事を明らかにした。 1,野生型シロイヌナズナの成熟胚はほぼすべての細胞が葉緑体に分化した色素体を含む。これに対してcrl変異体の胚は約30%の細胞が葉緑体に分化した色素体を持たない。さらに、約10%の細胞が我々の測定装置の検出限界以上に葉緑体局在型YFPタンパク質を取りこめる色素体を持たない。 2,ftsZ1-1変異体の胚は約4%の細胞が分化した色素体を持たない。さらに、約1%の細胞が我々の測定装置の検出限界以上に葉緑体局在型YFPタンパク質を取りこめる色素体を持たない。 3,crl ftsZ1-1二重突然変異体の胚は約55%の細胞が葉緑体に分化した色素体を持たない。さらに、約10%の細胞が我々の測定装置の検出限界以上に葉緑体局在型YFPタンパク質を取りこめる色素体を持たない。 4,crl ftsZ1-1二重突然変異体の胚は全体的な形態が異常となり茎頂分裂組織を含む領域が野生型の約2.5倍に拡大し、子葉原基の数が増加する。また、茎頂分裂組織を2つ持つ胚も生じる。 以上の結果から、葉緑体分裂の阻害が色素体の葉緑体への分化阻害を胚において引き起こす事、および胚の形態形成不全を引き起こす事が明らかとなった。
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