本年度は、イネ葉緑体形成不全突然変異株virescent(v_1、v_2)を用いて、V_2の機能解析と、v_1の原因遺伝子の同定を重点的に進めた。 1)移送実験および酵母ノックアウト株を用いた相補実験から、V_2遺伝子がミトコンドリアで機能するguanylate kinaseをコードすることを明らかにした。また、V_2タンパク質がguanylate kinase活性を持つことを確認した。 2)v_2変異株におけるミトコンドリアの各種生理活性を測定した。v_2変異株においては、cytochrome c oxydaseの活性が野生株より減少していたが、フマラーゼ活性など他のパラメーターには野生株との顕著な差は見られなかった。ミトコンドリアのDNA含量や、細胞内のATP含量に関しても、V_2欠失の直接の影響は観察されなかった。 3)RNAi法によりシロイヌナズナのV_2オルソログ遺伝子ノックダウン株を作製した。 4)細胞質に局在する、既知の核酸合成経路を触媒すると考えられるguanylate kinase遺伝子の解析を行った。発現解析により、V_2と異なり、ユビキタスに発現していることが分かった。イネにおいてRNAi法によるノックダウンを試みたが完全なサイレンシング株は得られず、致死性であることが予想される。また、シロイヌナズナにおいては2コピーの遺伝子が存在するが、タグラインから得られたノックアウト株ではそれぞれ表現型は野生株とほとんど変わらないか、矮性を示した(ダブルノックアウト株は作成中)。強い矮性を示した個体においてもクロロシスを呈さなかったことから、V_2との役割の違いがあり、葉緑体分化に関する冗長性はないと推定される。 5)V_1タンパクは葉緑体局在型の新規のタンパク質をコードしていることが示唆された。モチーフ検索から、バクテリアの転写・翻訳制御因子との関連が示唆された。 6)抗体を作製し、発現解析を行ったところ、V_1タンパク質は約32kDaの分子量を持ち、発生初期の特定のステージ(P4)の葉で一過的かつ多量に蓄積することがわかった。
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