研究課題
感染防御など植物のストレス応答にプログラム細胞死(PCD)が重要な役割を果たすが、その実行や制御の分子機構は不明な点が多い。本研究では、細胞周期を同調させた培養細胞を用いて、感染シグナル(エリシター; PAMP)により同調的な細胞死が誘導される実験系を構築し、動植物の比較ゲノム解析により新規プログラム細胞死制御因子を同定・機能解析すると共に、特にミトコンドリアや液胞などのオルガネラが細胞死誘導に果たす役割を解析することを目指した。エリシターによりPCDが誘導されたタバコBY-2細胞では、細胞質の凝集などの形態的な変化が観察されたが、顕著な核の形態変化やDNAの断片化は観察されなかった。一方PCDに先立ち、エリシター添加後数時間以内にMTT還元活性が低下し、ミトコンドリアの膜電位の脱分極が誘導されると共に、細胞内のATP量の減少が見られた。MTT還元活性の低下は、細胞質のCa^<2+>動員などの初期応答反応と同様、プロテインキナーゼ阻害剤やイオンチャネル阻害剤により濃度依存的に抑制された。また膜電位依存性Ca^<2+>チャネル機能破壊株のイネ培養細胞では、エリシター誘導性細胞死と共にMTT還元活性の低下が著しく抑制された。一方、植物では全く未知だが、動物のミトコンドリアにおいて細胞死制御因子として機能するBcl-xLを過剰発現させたタバコ培養細胞では、エリシターによるミトコンドリア膜電位の脱分極や、ATP量の減少が抑制され、細胞死が阻害された。こうした結果から、植物の感染シグナル誘導性細胞死において、Ca^<2+>チャネルを介したシグナル伝達系の下流で、ミトコンドリアの機能低下が誘導され、PCDの制御において重要な役割を果たす可能性が考えられた。またエリシターによるPCD誘導過程の液胞を経時的に観察したところ、細胞死に先立って細胞質糸が減少し、液胞の構造が変化することが明らかとなった。
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