研究課題
様々な環境条件での遺伝子発現を、モデル生物のラン藻Synechocystis PCC6803のDNAマイクロアレイを用いて解析し、光合成生物にのみ広く保存され且つ植物では葉緑体に局在すると予想された、約100個の機能未同定遺伝子を抽出した。これらの機能未知遺伝子は、特定の環境ストレス条件下で葉緑体機能の分化・環境適応に、極めて重要な役割を果たしていると考えられる。本研究では、これらの未知遺伝子にコードされたタンパク質の機能を解析し、葉緑体の環境ストレス適応過程における役割を明らかにするとともに、植物個体レベルでの生存戦略における役割を明らかにすることを目的とする。本年度は、Synechocystisで作製したストレス応答性機能未知遺伝子の変異株約90種について、通常の培養条件と環境ストレス条件で光合成活性を測定した。その結果、slr1674遺伝子の変異株で、酸化ストレスなどの環境条件下で、顕著な光合成活性の低下が観察された。このslr1674遺伝子の光合成機能の環境適応獲得の機構を明らかにするため、StrepIIタグをslr1674遺伝子に付加した株を作製した。現在、この株を酸化ストレス状態に置き、StrepIIタグを付加したslr1674タンパク質の発現を誘導した細胞の抽出液から、Strep-Tactin sepharoseカラムにより精製を行い、ともに精製されるタンパク質分子種の同定を試みているところである。今後はslr1674とin vivoで相互作用する因子を同定し、それらタンパク質の機能を足がかりに、slr1674の機能を明らかにしていく。Atlg63610、At2g14910の欠損変異株をライブラリーから入手し、これら遺伝子の二重変異株を作製して、ラン藻の知見を参考にして表現型を解析する。これまでのslr1674の解析により実験系を確立できているので、さらに解析する環境ストレス条件を増やしてラン藻の変異株のスクリーニングを行い、その他の機能未知遺伝子についての知見を得る。それらの遺伝子のシロイヌナズナのホモログについての機能解析も並行して行う。
すべて 2006 2005
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