研究概要 |
脳の雄性化は、新生児期におけるステロイド暴露によって引き起こされる。近年、ラット視索前野ニューロンにステロイドが作用するとスパイン形成が亢進されること、またこの作用はプロスタグランジン(PG)E2によって介達されることが明らかとなった。本研究の目的は、オス性行動の発現に関与するPGE2受容体(EP)を同定し、スパイン形成亢進の分子基盤を明らかにすることである。以下に今年度の成果を示す。 (1)新生仔マウス視索前野におけるシクロオキシゲナーゼとEP受容体の発現 新生仔の視索前野には4種類全てのEP受容体発現が認められた。興味深いことに、オス個体では、視索前野におけるCOX-2とEP2,EP4発現量に相関が認められた。ステロイドはCOX-2遺伝子を誘導することから、視索前野におけるこれら受容体発現もステロイドによる制御を受けるのかもしれない。 (2)オス性行動の発現に関わるPGE受容体の同定 4種類のプロスタグランジン(PG)E2受容体(EP1、EP2、EP3、EP4)欠損マウスの雌雄個体において、オス性行動(マウンティング、挿入、射精)の解析を行った。その結果、ある種のEP欠損マウスはオス性行動をほとんど示さないこと、また別のEP欠損マウスでは、逆にオス性行動が亢進していることを見出した。現在、各EPに選択的な作動薬・拮抗薬を用いて性行動発現の誘起・阻害を試みている。またPGE2による視索前野ニューロンのスパイン形成亢進の分子メカニズムを解析するため、野生型ならびにEP欠損マウスの視索前野ニューロン初代培養解析系の樹立を試みている。
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