研究概要 |
ホ乳類の発生では、受精時に遺伝的な性が決まるが、個体の性分化は胎児期の生殖巣が精巣、または卵巣に分化することにより始まると考えられている。我々は生殖腺の性分化以前に雌雄の発生の差異があるのかどうかに興味を持ち、時系列を追った雌雄の発生を比較することにした。発生を比較するために、胚盤胞、および着床後の6.5日胚で雌雄の遺伝子発現をDNAマイクロアレイを用いて検討を行う。 まず、X染色体にGFPトランスジーンを挿入したマウスを作製し、このマウスを用いて胚盤胞期における雌雄胚の性別を判定する方法を開発した。現在までに、GFPの蛍光の有無を指標として選別した雌と雄の胚盤胞における遺伝子発現をDNAマイクロアレイを用いて比較し、複数の遺伝子の発現に差があることを見いだした。これらの遺伝子についてRT-PCRを行い顕著な差を示す4遺伝子を同定することに成功した。雌で過剰に発現している遺伝子としX染色体上のてXist, Rhox5/Pem,雄で過剰に発現している遺伝子としてY染色体上のDby, Eif2s3yである。これらの中から雌特異的な発現を示すホメオボックス遺伝子Rhox5/Pemに着目し、この遺伝子の発現パターンをM.M.musculus(B6)とM.M.molossinus(JF1)を用いた亜種間交雑マウスで詳細に解析した。その結果Rhox5/Pemは父親由来のX染色体から発現するゲノムインプリント遺伝子であることを明らかにした。この結果から、エピジェネティックに制御された雌雄の差が着床時に存在することが示唆された。現在、着床後の雌雄胚の遺伝子発現比較解析も進行中である。
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