研究概要 |
現在までに5系統の生殖腺形成変異体の表現型解析ならびに原因遺伝子探索を行なってきた。2系統はその原因遺伝子の位置をメダカゲノム上およそ300kb以内にまでに狭めており,その他の系統についても表現型の遺伝様式解析を行うことにより半優性変異ならびに劣勢変異であることが判明した。また1系統は生殖細胞分裂のある特定段階に変異があることが判明しつつある。 メダカの生殖腺を構成する生殖細胞と体細胞の系譜解析も行なった。その結果、体節形成初期の側板中胚葉後端部に「生殖腺形成場」が存在し,そこへ向かって始原生殖細胞が移動する一方で(Kurokawa et al. 2006 DGD in press),その形成場からは生殖腺体細胞の予定前駆細胞が分化してくることが判明した。体節形成後期になると予定前駆細胞は前後軸に2群に分かれて分布した後に生殖腺体細胞への分化が決定し,その細胞と始原生殖細胞が接触,相互作用を行なうことが明らかとなった。さらに、この2群の細胞は生殖腺原基が形成される直前期になると異なる遺伝子を発現することも明らかとなった。今までは,生殖腺体細胞がどこから出現するのか明らかでなかった。また異なるところから分化してくる生殖細胞と生殖体細胞とがどのようにアレンジされて生殖腺が形成されるのかも明らかではなかった。しかし今回の研究で生殖腺形成場という器官形成場(organ field)が初期体節期には存在することがわかり,この領域は生殖細胞と生殖腺体細胞とが会合して生殖腺原基形成の前段階が進行する重要な場であることが明らかとなった(Nakamura et al. revision submitted)。
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