研究課題
本年度は主に、1)動物の生殖巣の再生機構、2)生殖巣の形成における細胞の挙動と分化、という2点に注目して研究を行った。それぞれの研究成果の概略を以下に示す。1)環形動物であるヤマトヒメミミズは、無性生殖と有性生殖の両方の能力をもつ極めて珍しい動物である。無性生殖で増殖する際、ヤマトヒメミミズは自らのからだを数断片に切断し、それぞれの各断片はその後完全に再生してもとの成体に戻る、というサイクルを繰り返す。一方で無性生殖中のヤマトヒメミミズをある条件下におくと、有性化し、体の前方の7番目と8番目のセグメントに生殖巣が発達する。これらの現象からいくつかの興味深い疑問が生まれる。まず、生殖巣を作る能力を持つ7-8セグメントは、体の後方からでも再生するのか?つまり生殖巣は再生するのか?次に、もし生殖巣が再生するとすれば、生殖細胞はどこからくるのか?様々な解析の結果、生殖巣を作る能力を持つセグメントは、体の後方からも再生することを見いだした。また生殖細胞の挙動について、他のモデル動物で広く知られているPiwi遺伝子の発現をマーカーにして解析したところ、Piwi陽性細胞は無性個体において、7-8セグメントにクラスターをなして局在していた。加えて驚くべきことに、Piwi陽性細胞は体全体にもまばらに散らばっていた。これらの細胞は、無性生殖によって体が断片化する際、切断面に存在するPiwi細胞が増殖し、体の再生に伴って再生芽組織に侵入し、やがては将来の生殖巣になる体細胞の組織と混ざり合うことを見いだした。以上の知見は、生殖巣の再生の分子機構を探る上で極めて新しい発見であり、生殖医療につながる研究基盤となる。2)脊椎動物の初期胚では、生殖巣原基は側板中胚葉に由来する。その際上皮-間充織転換が起こり、細胞が体内に移動することを見いだした。細胞の極性変化が生殖細胞の分化にどのような役割を持つのかについて、現在解析中である。
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Current Biology (in press)
Developmental Biology (in press)
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