研究概要 |
マウスES細胞からの長期間胚様体培養は生殖細胞の出現及び減数分裂分化を促した。これは、ES細胞培養系が性分化の分子基盤を解明するうえで、貴重な培養モデル系となることを示す。本研究は、このES細胞培養分化系を用いて、経時的および人為的な培養条件の変動に伴うin vitro性分化を検討することから、雌雄性分化の制御機構を探る培養モデル系の構築を目指す。 1.ES細胞in vitro分化系においてVasa陽性生殖細胞となった細胞には、雌雄の性差を反映する分化形質の発現が検出された。しかし、分化後3週目の胚様体には雌雄形質が混在することから、胚様体形成過程において雌雄生殖細胞が同一細胞塊に分化すると考えられる。一方、同時期の胚様体には性分化を制御する性腺支持細胞(セルトリ細胞や濾胞細胞)などの形質発現が検出されたが、組織染色の結果、性腺組織状の局在性は観察されず、生殖/支持細胞間の接触は局所的なものに留まると考えられる。 2.ES細胞から精子・卵形成細胞への性分化を促す条件を知るため、雌雄分化促進因子であるWnt4(♀),及びMIS(♂)を強制発現する細胞を作成し、両者とES細胞の共培養系における性分化を検討した。生殖細胞に現れる雌雄差を判別した結果は、雌雄それぞれの液性因子がin vitro性分化に対して、絶対的ではないものの一定の促進効果を持つことを示した。一方、新生児卵巣/精巣細胞との共存は性分化に対して顕著な差は見られなかった。 3.上記ES細胞分化系に性腺支持細胞分化の可視化を導入するため、MIS-GFP遺伝子を作成し、組換えES細胞の樹立を行った。しかし、その発現レベルは可視化検出限界以下であったため、生殖/支持細胞を同時に可視化するES細胞系の樹立には至らなかった。より強力なレポーター遺伝子構築による再検討課題とされる。
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