研究課題
本年度は核内受容体の一つであるエストロゲン受容体β(ERβ)の分解制御機構を解析した。ERβはユビキチン・リガーゼであるCHIPによってユビキチン化を受け分解されることを明らかにした。さらにERβのC末端に存在するF domainがプロテアソームとERβとの結合を抑制し、分解を制御していることも明らかになった。CHIPによる分解制御は、リガンドが消失したときの転写活性抑制機構に関与していることが示唆されている(投稿中)。また、ERβが中枢において神経伝達物質であるセロトニンの量を制御していることをERβ遺伝子欠損マウスを用いて明らかにした。セロトニンはうつ病などと深く関与することから、閉経後のエストロゲン低下によるうつ症状は、ERβの機能低下によって説明することが出来る。現在、協業を進め、地衣類500種類からERβを活性化する成分を探索中である。また、CHIPの低下が乳癌の悪性化と深く関与していることを明らかにした。CHIPの発現をRNAiを用いて抑制すると、細胞の足場依存性の低下が認められた。足場依存性の低下はアノイキスの低下と相関している。アノイキスとは、細胞が足場を失ったときに起きるアポトーシスであり、Aktによって制御されている。CHIPのノックダウン細胞では、Aktの活性化が抑制しているため、アノイキス耐性となっていることが明らかとなった。ERβはリガンド誘導性の転写因子であるが、転写制御には遺伝子のメチル化などその他のファクターも深く関与する。我々は、T細胞においてインターロイキン2遺伝子の転写活性がプロモーター上のDNAメチル化によって制御されていることを見出した。一度抗原刺激を受けたT細胞のIL-2プロモーターは脱メチル化を受け、2回目からの刺激に対し即時応答が可能となる。この結果から、免疫記憶を分子レベルで理解することが可能となるかもしれない。
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