研究概要 |
1.ヒトの基本転写因子TFIIEの構造-機能解析 ヒトTFIIEβサブユニット中央に位置するフォークヘッドドメイン(アミノ酸66-146番目)の機能解析を進めたところ、この領域の球状構造を保持するのに重要な疎水性アミノ酸残基(Val77, Leu78, Ile102, Ile111)と3個の塩基性残(Lys129, Lys140, Lys142)がTHIIEの転写活性に重要であることが明らかになった。機能的な面からは後者の塩基性領域が重要と考えさらに解析を進めたところ、この領域の機能としては2本鎖DNA結合活性が重要であることを明らかにした(Tanaka et al., Genes Cells, 2009)。 2.ヒトTFIIEとRNAポリメラーゼII(Pol II)の相互用の解析 TFIIEはαサブユニットがPol IIのRpb5サブユニットと強く結合する。代表者らは、この結合がPol IIの転写開始の際の活性化に伴う構造変換の引金になっていると考えている。今年度は、分裂酵母TFIIEα遺伝子破壊株を作製した。今後Rpb5との結合の重要性を遺伝学と生化学を用いて詳細に解析していく。 3.メディエーター複合体の解析 メディエーターは、約30サブユニットからなる巨大複合体である。この複合体のCDK/Cycサブ領域はPol II最大サブユニットのC末端7アミノ酸繰返し配列CTDを基本転写因子THIIHと共にリン酸化する活性を有する。最近代表者らは、ヒトなどの高等脊椎動物ではメディエーターに2種のCDK、CDK8とCDK19を持ち、各々が別のメディエーター複合体を形成すること、CDK8は転写活性化にCDK19は抑制に働くことを明らかにした。今年度は、CDK19に特異的相互作用するタンパク質を酵母2ハイブリッド法で同定して解析を開始した。重要なことにこれらはクロマチン制御や転写抑制に関わる因子であった。
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