研究概要 |
遺伝子発現の制御プログラムには、多きく二つの様式があると考えられる。一つは、恒常性維持のプログラムであり、例えば酵素遺伝子が必要な時にonになり、必要なくなるとoffになるメカニズムを支えている。もう一つは、非可逆的変化を生み出すプログラムであり、例えば細胞分化に使われる。この仮説を検証するために、細胞分化と酸化ストレス応答を制御する転写因子Bach1およびBach2に注目し,そのDECODE複合体とDECODE回路の実体を解明することを試みた。具体的には以下の実験を行った。 1.Bach1複合体の精製:赤白血病細胞MEL細胞にエピトープ付加Bach1を発現させた。大量培養の後,核抽出液を調製し,抗エピトープ抗体を用いたアフィニティー精製とグリセロール密度勾配遠心により複合体を得た。質量分析により構成蛋白質を同定した。 2.Bach2複合体の精製:同様にBach2をBリンパ球細胞株Bal17で発現し,Bach2複合体を精製した。質量分析により構成蛋白質同定に成功した。 3.BTBドメインの解析:大腸菌でBach1のBTBドメインを発現・精製し,結晶を得た。そしてX線回折計等を用いて立体構造を決定した。 4.新規Bach1標的遺伝子:ジーンチップを用いて野性型およびBach1欠損線維芽細胞間で発現比較を行い,Bach1標的遺伝子候補を得た。そのシスエレメント解析を行い,Bach1が結合して抑制すること,この抑制は今まで知られていた分子機構(Bach1/Mafヘテロ二量体のDNA結合)とは全くことなることを見いだした。
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