研究概要 |
FLAGとHAエピトープをタンデムで融合したBach1,あるいはBach2を発現する細胞株を樹立した。Bach1に関してはマウス赤芽球系のMEL細胞を,Bach2に関してはマウスBリンパ球系Bal17細胞を用いた。これら細胞株の大量培養を行い,核抽出液を調整したのち,FLAG抗体ビーズとHA抗体ビーズを順次用いて,二段階アフィニティー精製を行った。現在までのところ,Bach1に関しては再現性良く複合体候補を精製できている。予備的質量分析の結果,癌抑制因子など予想外な因子が含まれることが明らかになった。このことにより,当初は予定していなかった実験を追加することになった。また,クロマチン修飾酵素もいくつか含まれていることをウエスタン等の実験から見出している。 一方,Bach2複合体に関しては、19年度に入ってはじめて精製に成功し、さらに、構成要素の質量分析もほぼ終えている。この複合体は、大きく二つの機能単位に分けられると考えている。一つは、ヒストンアセチル化酵素HDAC3および機能不明因子Rif1を含むコリプレッサー複合体、もう一つはユビキチン化E3リガーゼCullin3を含む、Bach2分解制御複合体と予想される。しかし、各因子のBach2機能制御における役割は不明であり、さらなる解析が必要である。特に転写制御という点で興味深いのは、Rif1と考えている。Rif1はテロメア長の維持に関わることが酵母で示されているが、哺乳類ホモログの機能はほとんど知られていない。私たちはRif1とHDAC3が同じ複合体に含まれることを免疫沈降実験等で確認しており、このことから、Rif1はヒストン修飾制御に関わる新規コリプレッサーとも予想される。
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