研究課題
真核細胞の核内では遺伝子転写、複製など様々な生物学的現象がおきている。細胞は遺伝情報を、安定に保ち、正確に発現すなわち細胞分化を維持するために、多様な機構を働かせている。その中の1つがクロマチンと呼ばれるDNA高次構造である。平成17年度は細胞核の遺伝情報の収納と発現のメカニズムに焦点をあて、クロマチン中のコアヒストン蛋白質修飾と遺伝子発現制御との関連、および機構の一端を明らかにした。すなわち試験管内で構築したクロマチンを用いてクロマチン中のヒストンのみをリン酸化する酵素NHK-1を発見した。この酵素はH2AのC末端の119番目トレオニンのみにリン酸化を導入する(Genes Dev 18:877-888,2004)。このキナーゼは生物種間でも保存されており重要な酵素とリン酸化部位であると考えられる。さらにこのリン酸化酵素が減数分裂において重要な働きをしていることを見出した(Genes Dev 19:2571-82、2005)またH2A118番目、119番目のアミノ酸の翻訳後修飾に着目し、ヒストンH3のメチル化と両者がクロストークしている事を明らかにした。またリン酸化酵素NHK-1はヒトがん細胞においても増殖に重要な役割をしており、H2AのC末端リン酸化部位のリン酸化が癌細胞において亢進していることを明らかにした。今後も引き続きクロマチン構造変換の生物学的意義を構造機能の面から明らかにしていく。
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Nature Structural & Molecular Biology. Published online : 5 March 2006
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