ステロイドなどの脂溶性低分子シグナル物質はリガンド依存性の転写因子である核内受容体を介してその組織特異的生理作用や各種病態における役割を発揮する。本研究は核内受容体の相互作用による遺伝子発現制御とその標的遺伝子を明らかにし、組織特異的作用や各種病態に密接に関わる核内受容体の遺伝情報制御を統合的に解明することを目的として行った。本研究において我々は先にエストロゲン応答遺伝子として報告したCOX7RP遺伝子の発現制御機構について解析を進めた結果、COX7RP遺伝子のエストロゲン応答配列(ERE)はエストロゲン受容体(ER)に加え、Estrogen-related receptor(ERR)によっても制御されることを明らかにした。また、COX7RPタンパクはミトコンドリアに局在し、エネルギー代謝に関与することを明らかにした。さらに、子宮内膜癌由来のIshikawa細胞においてCOX7RPはエストロゲン誘導性の発現を示し、COX7RPは細胞増殖に関わることを明らかにした。ERRはミトコンドリアの生合成や脂肪酸酸化に関わる核内受容体として注目されている。本研究によって、ミトコンドリアの機能に関わるCOX7RPがERとERRの双方によって発現調節されていることを見出したことは、これまで未解明の問題であったエストロゲンの作用とエネルギー代謝、肥満、糖尿病などとの関連を核内受容体の相互作用のレベルで解き明かすものであり、新たな治療、予防、創薬における分子標的としての応用が期待された。
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