研究課題/領域番号 |
17054039
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
田中 信之 日本医科大学, 大学院医学研究科, 教授 (80222115)
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研究分担者 |
佐藤 恵理 (織田 恵理) 日本医科大学, 老人病研究所, 講師 (90339440)
阿部 芳憲 日本医科大学, 老人病研究所, 助手 (00386153)
川内 敬子 日本医科大学, 老人病研究所, 助手 (40434138)
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キーワード | p53 / NF-κB / IKKα / β / 足場非依存性増殖 / 癌遺伝子 / グルコース代謝 / GLUT3 / グルコーストランスポーター |
研究概要 |
我々は、P53がNF-κBを構成するP65とNF-κBを活性化するキナーゼであるIKKα及びIKKβと結合すること、染色体上でP65/IKKα/IKKβの複合体にP53が結合するとIKKβを解離させてP65/IKKα/P53の複合体を形成すること、P53の結合によりIKKα及びIKKβのヒストンH3のリン酸化活性が抑制され、その結果としてNF-κB活性が抑制されることを見いだした。更に、P53欠損マウス由来の胎児線維芽細胞(MEF)では、未刺激状態でIKKα及びIKKβのキナーゼ活性が更新し、NF-κBの恒常的な活性が起きていることを見いだした。P53欠損MEFは癌遺伝子を単独で遺伝子導入するのみでトランスフオームし軟寒天培地でコロニーを形成するようになる。この現象に癌化に促進的に働くと考えられているNF-κBが関与するかを調べる為に、P53/P65欠損細胞やP65siRNAを発現するP53欠損細胞で活性型ras遺伝子によるトランスフォーム能を調べたが、P65の発現が無いと軟寒天培地でのコロニー形成はほとんどみられなかった。この結果から、P53欠損細胞の癌遺伝子によるトランスフォーメイションにはNF-κBが必要であることを明らかにした。更に、この機構を制御するNF-κBの標的分子を同定した。癌細胞はグルコース代謝が亢進していること、このことが増殖に有利に働き、制御を受けない細胞の増殖や浸潤につながることが多くの研究により明らかとなりつつある。我々はglucose trasnsporterであるGLUT3の発現がNF-κBによって誘導されることを見いだした。これに伴い、活性型rasでトランスフォームしたP53欠損MEFではglucoseのuptake及び消費が亢進していること、それに伴いlactateの生成及びATPの産生が亢進していること、これらの現象がP65の発現を抑制すると見られなくなることを明らかにした。更に、活性型rasでトランスフォームしたP53欠損MEFの軟寒天培地でのコロニー形成能がGLUT3の発現を抑制すると低下すること、P65の発現を抑制することで低下したコロニー形成能がGLUT3を遺伝子導入すると回復することを明らかにし、この機構にNF-κBによるGLUT3の発現誘導が関わる事を見いだした。
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