研究課題/領域番号 |
17063004
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
藤井 純夫 金沢大学, 文学部, 教授 (90238527)
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研究分担者 |
足立 拓朗 金沢大学, 中近東文化センター, 研究員 (90276006)
徳永 里沙 慶応大学, 文学部, 非常勤講師 (00458936)
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キーワード | セム系 / 部族社会 / 遊牧民 / 墓制 / ビシュリ山系 |
研究概要 |
本年度は、立ち上げの遅れていたシリア東部ビシュリ山系でのケルン墓調査を軌道に乗せ、具体的な発掘データを得ることに専念した。そのため、以下2回の現地調査を実施した。 第1回目の分布調査(平成19年5月18日〜6月1日)では、調査区域内の広域サーベイを実施し、ビイル・ラフーム村の北側に広がる石灰岩丘陵地帯で、4件のケルン墓群を確認した。いずれも興味深い遺跡であったが、保存状態や規模・アクセスなどの点から、ヘダージュ1、同2ケルン墓群が今後の調査対象として有望と判断された。そのため、この2件のケルン墓群については地形概略図・遺構分布図などを作成し、個々のケルン墓の測定・記述・写真撮影などを実施した。 第2回目は、ヘダージュ1ケルン墓群の試掘調査(平成20年2月28日〜3月25日)である。10号ケルン墓を半裁発掘した。その結果、このケルン墓が、1)中央に大型のシスト、その周囲に二重の周壁を伴う複雑な構造を持っていること、2)その周囲にも、竪穴簡易住居や擬似壁面などの付帯遺構を伴っていること、3)シスト部のみならず、回廊部からも数体分の埋葬遺体が出土すること、4)出土遺物から見て、前期青銅器時代末から中期青銅器時代初頭にかけての年代に比定されること、が判明した。これによって、ビジュリ山系北麓に集中する多数のケルン墓群が、メソポタミア粘土板文書が言及する最古のセム系遊牧集団「マルトゥ(またはアムッル)」の墓である可能性が高くなった。
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