研究課題
計画最終年度の本年は、ビシュリ山系北麓青銅器時代ケルン墓群の発掘・分布調査を2回実施すると共に、これまでの調査成果の総括を行った。6月に実施した第5次調査では、調査区南半のケルン墓分布を精査し、ケルン墓個々の記述・計測や分布図の作成などを行った。その結果、ワディ・ラフーム2遺跡など、11件のケルン墓群(計126基のケルン墓)が新たに確認・登録された。8月の第6次最終調査では、調査区北半の補足発掘調査と分布調査を相前後して実施した。補足発掘調査では、ワディ・ハイユーズ1、ジャール・アッ・テュール1など、計5件のケルン墓群を選択的に発掘し、そのいずれもがヘダージェ=ラフーム編年の枠組内で理解できることを示した。また、出土遺物の分析によって、これまでの年代観の妥当性を再確認した。一方、分布調査では、17件のケルン墓群(計131基のケルン墓)を新たに確認・登録した。これによって、調査区全体では計35件のケルン墓群(約400基のケルン墓)が存在することが判明した。いずれの場合も10数基のケルン墓から成るケルン列が基本単位となっており、これが複数集まって一つのケルン墓群を構成していた。こうした墓域組成の単位分解によって、遊牧民固有の文節的社会構造(すなわち系族・氏族・部族という集団の重層性)を透視することができた。なお、5年間に及ぶ調査・研究の成果は、11月開催の国際シンポジウム「セム系部族社会の形成-ユーフラテス中流域の総合的調査」で口頭発表し、同シンポジウムの発表収録集の中で報告した。
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西アジア考古学 12(掲載確定)
第17回西アジア発掘調査報告会報告集 17
ページ: 76-81
Al-Rafidan, Special issue (Formation of Tribal Communities : Integrated Research inthe Middle Euphrates, Syria.)
ページ: 61-77
http://homepage.kokushikan.ac.jp/kaonuma/tokuteiryouiki/information.html