研究課題
「シュメール文字文明」の拡大と展開過程という課題にかんして、シュメール語彙リスト研究(前川)、アッカド語文学テキストにおけるシュメール語(松島)、アッカド語によるシュメール語文法構造への影響(森)、メソポタミア・インダス交渉(前川・森)、イラン国立博物館(テヘラン)蔵粘土板文書調査(森、松島)といった研究が実施された。シリア各地ではシュメール語彙リストがはやくから受容された。前3千年紀では、文字記録システムを受容するにあたって、語彙リスト学習による書記養成が必須であったことが、前川によってあきらかとなった。メソポタミアとインダス間の大規模な交流が可能になったのはアッカドによるイラン地方征服によるところがおおきいことが前川と森若葉によって考察されるとともに、イラン研究者との交流が生まれ、森、松島英子によるイラン国立博物館における粘土板調査が可能となった。森と松島は、12月イラン国立博物館を実施し、今後の研究についてイラン側の全面協力の約束を得た。前田徹は「<シュメール文字文明>世界」のなかでの宗教と王権イデオロギーの考究を継続した。前田は南部メソポタミアの都市的世界が、東方あるいは西方の人々の流入をどのように受け入れたかを克明にあきらかにすることができた。ここにわれわれは、本特定領域研究の研究対象である「セム系部族」にかんする、本格的な論考を得ることができた。また依田泉によって前2千年紀のセム諸民族の刑罰観の詳細な研究が行われた。前3千年紀から2千年紀の王権イデオロギーにかんして、前川が前田とはことなった方法論で、ウル第3王朝から前1千年紀後半にいたるまでの神と王とのかかわり、王の権能をあらわすシンボルである「棒と輪」Rod and Ringが、なにを象徴しているかを、はじめて統合的に論じることができた。これによれば、「棒と輪」はふつう説明されるように測量道具などではなく、主として異民族支配の道具として神から委譲されるのだということになる。楔形文字研究者や図像学者がながく論じて、結論を得ることに失敗してきた問題に、決定的な意義をもつ論議が生まれた。
すべて 2010 2009
すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) 図書 (1件)
「シュメール文字文明」の成立と展開(前川編)(平成17~21年度研究成果報告書)
ページ: 29-89
早稲田大学文学研究科紀要 第55輯第4分冊
ページ: 35-48
Orient Vol.45
ページ: 61-66
「シュメール文字文明」の成立と展開(前川編)(平成17-21年度研究成果報告書)
ページ: 17-20
Babel and Bible : (L.Kogan, et al.(eds-))(RAI 33) (印刷中)
ページ: 23-28
西洋史論叢 第31号
ページ: 123-131
天空の神話:風と鳥と星』(篠田知和基編)(楽榔書院)
ページ: 513-524
アジア遊学 121号
ページ: 37-45
Et il y eut un esprit dans 1'Homme, Jean Bottero et la Mesopotamie(X.Faive et al.(eds-))
ページ: 55-64
Mythes, Symboles, Langues II(篠田知和基編)
ページ: 55-62