動物考古学と考古植物学の手法により、西アジアの先史時代社会から古代都市文明社会への移行過程における生業基盤の変化を明らかにすることを目的として、調査を開始した。本年度はシリア北部のユーフラテス中流域ビシュリ山系の調査が開始されていないため、研究代表者はトルコ南東部のユーフラテスおよびチグリス上流域の遺跡出土の新石器時代遺跡出土の動物骨の分析をおこない、研究分担者はシリア北部の遺跡の新石器時代遺跡出土の植物遺存体の分析を行った。ともに牧畜と農耕の開始過程に関わる時代の重要な資料である。研究代表者は平成18年2月に9日間トルコに出張し、資料の分析を行うとともに、イスタンブル大学先史学部の考古学者と研究計画に関する協議を行った。研究分担者は平成18年3月に約3週間シリア、ヨルダンで出土資料分析をおこなったほか、フランスのCNRS研究所にて比較植物標本の閲覧と研究連絡をおこなった。研究協力者(姉崎・茂原)は、日本国内のシリア出土の動物骨資料の情報収集を行ったほか、日本の現生イノシシ骨と遺跡出土イノシシ骨資料の計測と形態比較を行い、家畜化に伴うサイズ変化、形態変化に関する比較資料を蓄積した。研究協力者・藤田は、来年度以降、出土動物骨の幾何学的形態測定による形態解析を進めるために、ダラム大学(イギリス)にて、測定技術に関する情報交換を行い、測定方法の開発・改良を行った。来年度以降、まずイノシシの形態分析に幾何学的形態測定技術を応用する計画である。
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