研究課題/領域番号 |
17063010
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研究機関 | 国士舘大学 |
研究代表者 |
沼本 宏俊 国士館大学, 体育学部, 教授 (40198560)
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研究分担者 |
小泉 龍人 古代オリエント博物館, 共同研究員 (80257237)
真保 昌弘 国士館大学, イラク古代文化研究所, 共同研究員 (60407202)
柴田 英明 国士館大学, 工学部, 教授 (50103635)
北野 信彦 くらしき作陽大学, 食文化学部, 助教授 (90167370)
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キーワード | アッシリア / 楔形文字 / 粘土板文書 / テル・タバン / メソポタミア / シリア / ハブール / 中期アッシリア時代 |
研究概要 |
本計画研究の中核としているシリア、テル・タバン遺跡の調査と出土遺物の分析に重点をおき以下の研究を遂行した。 1.テル・タバンの発掘調査を8〜9月に実施した。大きな成果としては、前年度調査した古バビロニア時代(前18世紀)の土器窯の継続発掘をした結果、新たに14点の粘土板文書が出土したことである。解読の結果、文書の多くはユーフラテス川流域のハナ国の王がタバンの王族に宛てた書簡であったことが判明した。中期アッシリア時代(前12世紀)の遺構で注目すべきは、巨大地下式煉瓦造墓の発見である。墓の被葬者は出土した銘文入り煉瓦からはタバンの皇太子と推測される。 2.粘土板文書の解読。16,17年度の調査で王宮の文書保管庫から出土した中期アッシリア時代の粘土板文書の洗浄、整理、解読をダマスカス博物館で行った。その結果、文書は完形文書102点、破片339点、封筒12点、封筒片142点であったことが伴明した。破片は今後の整理により接合する可能性がある。文書は前13世紀から12世紀にかけての王宮行政のための多種多様な記録で、半数は王宮に搬入された家畜、穀物、衣類、金属器等の物品の管理記録である。物品管理の中には帝国中央部や他の州都に対して義務付けられていたと考えられる貢ぎ物の管理も含まれていたことも明らかになった。文書解読成果はアッシリアの帝国形成過程を究明するうえで新史料になるのは確実である。 本年度のテル・タバンの調査では計44点の楔形文字史料を発見した。これらの文字史料の解読を発掘と並行し現地にて行った。上記の古バビロニア時代の文書にはアムル語系の人名や地名が多数認められることがわかった。今後さらに解読が進めば、セム系民族アムル人の勢力・移動範囲や拡散過程を究明するうえで貴重な資料になりえる。 3.国内に保管しているテル・タバンの過去の調査で出土したアッシリア時代の土器の整理分析を行った。実測、写真撮影等の作業が主で、報告書刊行に向けて現在も継続中である。 4.2月に研究代表者が約2週間、領域代表者が実施したビシュリ山系のユーフラテス川中流域の遺跡踏査に参加した。 楔形文字史料の発見と解読成果が、アッシリアと同じセム系民族アムル人の源流と特質を探究するうえで最も有効であることは言うまでもない。こうした面でも本年度の研究成果は、本特定領域研究「セム系部族社会の形成」の研究遂行に大きな貢献を成したと言える。
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