研究課題/領域番号 |
17063010
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研究機関 | 国士舘大学 |
研究代表者 |
沼本 宏俊 国士館大学, 体育学部, 教授 (40198560)
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研究分担者 |
柴田 英明 国士館大学, 理工学部, 教授 (50103635)
真保 昌弘 国士館大学, イラク古代文化研究所, 共同研究員 (60407202)
北野 信彦 東京文化財研究所, 伝統技術保存修復室, 室長 (90167370)
小泉 龍人 国士館大学, 古代オリエント博物館, 共同研究員 (80257237)
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キーワード | アッシリア / 楔形文字 / 粘土板文書 / テル・タバン / メソポタミア / シリア / ハブール / 中期アッシリア時代 |
研究概要 |
1.本特定領域研究計画研究班の合同調査遺跡であるシリア、ラッカ市のテル・ガーネム・アリの2次、3次、5次調査に、研究代表者の沼本が参加した。5次調査では、同遺跡の近郊にある前期青銅器時代の墳墓群の踏査を行い、多数の墓を確認した。墓群はテル・ガーネム・アリの墓地と推測され、20年度はこれらの墓の本格的な発掘調査を実施する。 2.本計画研究の核としているシリア、テル・タバン遺跡の発掘調査を8月初旬から9月末まで実施した。今回の調査は、中期アッシリア時代の日乾煉瓦造の王宮跡の詳細究明に焦点を置いた。テルの西側斜面に東西6m、南北6mのトレンチを設定し発掘を行い、上層からヘレニズム時代(紀元前後) (1層)、新アッシリア時代(前9〜7世紀) (2、3層)、中期アッシリア時代(前13〜11世紀) (4層)の層位を確認した。新・中期アッシリア時代の層位の調査で、大きな発掘成果をあげることができた。 新アッシリア時代:トレンチの東西南北に走る壁の幅約3m、残高約2.5mの巨大日乾煉瓦造建物跡の一部を検出した。壁の規模や排水施設を持っていることから公的建物であったと考えられる。注目すべきは、この壁に使用された煉瓦の中から小ブロンズ人物像が出土したことで、定礎記念像であったと推測される。この建物跡の下層からは甕棺墓を発掘し、墓碑銘と考えられる楔形文字が刻まれた土器を発見した。 中期アッシリア時代:王宮跡と一連の日乾煉瓦造の南北約4m以上、東西約4m以上の部屋の一部を検出した。部屋の床面からは径約1m馬蹄形の土器窯を認めた。特筆すべきは、この窯の灰原層から円筒形碑文片が出土したことである。碑文は解読の結果、97〜99年の調査で出土したタバンの主"アッシュール・ケタ・レシェル2世"の定礎記念碑文と同種のもので、前11世紀前半に年代付けられることがわかった。 今年度の発掘調査での新アッシリア時代の公共的大日乾煉瓦造建物跡、定礎ブロンズ像、タバン初の同時代の文字資料の発見等の新事実は、タバンが古バビロニア時代、中期アッシリア時代のみならず、新アッシリア時代もシリア北東部の統轄拠点として君臨していたことを裏付ける大きな消拠を提示することができたと言える。 今年度の調査で発見した楔形文字資料は52点で、その内訳は粘土板文書3点、煉瓦片39点、円筒形碑文片6点、土製鋲片2点、土器1点、装飾片1点であった。粘土板文書2点は古バビロニア時代、土器は新アッシリア時代、それ以外の資料は中期アッシリ時代のものであった。これらの文字資料の解読を山田と柴田が現地で行った。文字資料には、これまで出土した資料の欠落を補う多くの新情報が認められた。 3. 16〜18年度の科研費基盤研究(B)海外学術調査で実施したテル・タバンの三回の発掘成果概要報告書を出版した。これまでの調査で出土した楔形文字資料の解読が、山田、柴田により継続し進められた。この成果概要は同報告書に掲載した。
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